日記024

曇天と共に不気味な谷を降りる、人間に酷似する、その少しだけ前にそれは現れる。谷底の湿った沼地から太陽を求めて伸ばしたであろう真っ黒な手が見える。指先は朽ちていて少し風が吹けばポロポロと崩れ落ちそうである。この谷にはしばらくのあいだ風が吹いていない。鼻の奥に突き刺さる悪臭と視界の悪さ。地獄は本当に想像通りの場所だった。