dancing in the world

いつでも、それが可能だということは、それが永遠に先送りされることである。それは小さくて軽くて低いハードルだ、ほんの少し足をあげれば済む。けれども、そのハードルは軽くて簡単に持ち上げられる。ほんの少し足をあげるよりもほんの少しだけ簡単に。するとそのハードルは大きくて重くて高いハードルを乗り越えるよりも遥かに困難なものに見えてくる。今の俺の状態はこんなふうに表現できるかもしれない。そしてそれを今こそ、素早く、静かに、そして美しく乗り越えたいと思っている。その為に自分に向けて書いていきたいと思う。未来の自分がこのくだらないものを読んで、届かない手紙を過去へと郵便してくれることを想像しながら。

 

自分は一体何者だろうか。こんな思春期的な問から未だに離れることができない。一時期は自分のことなんて分かる訳ないから、興味の対象を外側に開いて、自分は空っぽになろうと思っていた。他者と出会い、音楽を聴き、映画を見て、それらについて考える。ただそうしていればいいと割り切ったこともあった。けれどもそういった極端な開き直りは長くは続かない。ふとした瞬間に対象が自分に向けられなんだか虚しくなる。やはり、対象は外と内、双方に向けて開いていなければならないと思う。大切なのはバランス。もしくは同時に双方に向けれることだろう。それにならってまずは内側へ、次に外側。そして最後に双方向に対象を開いていきたいと思う。

今年で23歳。簡単に自分史を書く

 

95年 爆誕 二日後に阪神淡路大震災

1歳 四六時中泣いていた 亀の様になって寝るのが好き

3.4歳 活動的 3歳上の姉や年上の従妹2人(男)と走りまわる

5.6歳 幼稚園で泥団子づくりに没頭 足が速い サッカーが好き

7歳 休み時間にサッカー、ドッチボールをするのが生きがい 家の庭で一人で遊ぶ

8歳 勉強より動くことが好き 家にゲームがないから友達の家でゲーム

9歳 姉の影響でミニバスを始める 

10歳 バスケットボールを蹴りまくる バスケをやめる

11歳 地元のサッカーチームに入る すぐに周りに追いつく レギュラーになる 

12歳 学校では仲のいい一人とずっといた 友達はいたが、一人で帰ったりしていた

13歳 中学入学 部活かクラブか悩んでクラブに加入

14歳 勉強は最低限 サッカーやモテることに夢中 クラブでスタメンになれない

15歳 中途半端にグレてみる 生徒会長とヤンキー、どちらも友達

16歳 高校入学 サッカー部 彼女ができる ややクールキャラに変更

17歳 やや個性を出し始める 自分は特別だと思いこむ 3.11

18歳 クラフトワークに出会う サッカーをやめ建築をやることに

19歳 上京 一人暮らし 建築の面白さに気づく 少し本を読む 服を買う

20歳 友達とインドへ 課題がたのしい ある程度評価される 音楽

21歳 卒業設計 バイトをやめる 友達が学校をやめる 偶然に委ね、就職先決定

22歳 事務所で働く 刺激的な毎日 徐々に色々覚えていく 忙しい つらくなる

23歳 事務所をやめて家に引きこもる 鬱 一年間フリーター宣言

 

そして今一年がたった。

こうしてみるとまだ自分は何者でないな、と変な勇気が湧いて来なくもない。圧倒的に若いな、と。そんなやつが自分とは何者かなんて考えたところで、なにになるのだ、と。

ここからは社会人として働きはじめてから、そこから逃げてフリーターになった直近二年間を振り返りたい。社会人になる前、簡単に言えばわくわくしていた。自分がこれからの環境でどれだけやれるか試してやろうと。その期待は裏切られた、わけでもなかった。所長から建築のあれこれを聞いたり、実際に建物が立ち上がるのを見て感動すらしていた。人間関係も別に悪くなったと思う。よく飲み会に行っていたし、ご飯も一緒に食べた。自分の仕事ぶりも時に褒めてもらえるくらいだった。けれど、一年後にはもうここには居れないと思って、事務所に一人でいるときに、自分の荷物をまとめて、すいません。と一言だけ書いて、その場所から逃げた。当然電話がたくさんきたが、電源を切って死んだように眠っていた。それ以来一切連絡もとっていないし、これからもないと思う。なぜやめたのか。なぜこうなったのか。当然この一年間、ほぼ毎日のようにそれは考えている。けれど一言ではうまく言えない。

やめた日、仕事は全然間に合ってなくてそれを伝えるのが苦しかった。今やっている仕事が自分の力ではどうやっても間に合わせられないところまで来ていたし、他の人も自分の仕事以外をやる余力があるようには見えなかったし、なによりそんな自分が情けなくなって、立っていられなった。近くの大通りに通る車に飛び込んだ方が楽だとも思った。その日の朝、不条理なことを言われてなにかの糸が切れたような気もしていた。普通に働いていたけれど、ふとした瞬間に自分の居場所がないな、とか本当はそうじゃないのにな、とかも思っていた。今日は仕事行きたくないなとおもっても、まぁそんなもんだろうとか思って通っていた。沢山やることがあるのに、デスクの前に座って、なんの気力も沸いてこないこともあった。そうして一日中、ネットサーフィンして帰ったりもした。土日があっても全く休めた気がしなかった。やめる二か月くらいまえから、職場に行くたびに胸が締め付けられるような感覚はあった。けれど、そんな表情は出さなかったし、それを言うことができる人も周りにいなかった。その時自分は、まだ一年目だし、慣れてきたら大丈夫だと思っていた気もするし、うまくいっているように見えるけれども違和感のある人間関係はどうしようもできないような感覚もあった。事務所を飛び出す数時間前、本当に立っていられなくなり、床に倒れて天井を見ていた。その天井は今でもはっきり思い出せる。死ぬことはできなったから、このまま残るか、逃げるか考えていた。いや、どちらかというと、逃げる決心をつけようとしていた気もする。事務所を出て、いつも通らない道を帰った。犯罪者の気分だった。裏切り者だった。途中座って今の状況を考えたりもした。頭は真っ白だったけど、変に落ち着いていた気もする。家についてベットに倒れてそのまま数時間布団のなかに隠れていた。あぁやってしまったという絶望と、やっと解放されたという感覚どちらもあった。

きっとこれから先もこの時のことをこの一年間を思い出して苦しんだりし続けるのだと思う。もっと苦しいことも当然あり得るだろうけど、このモヤモヤした気持ちを抱えて生きていくと しかなきとしか今はうまく言えない。偶然街で会ったりしても、隠れるだろう。謝ることもできないだろう、数年経って考え方が変わっているかもしれないけれど、今は正直、憎しみに近い感覚があることだけは書いておこう。そう思い込むことで、なんとか自分は生きていけると思っているのかもしれない。

やめた数日後に、学生時代の友人とあった。当然驚いていた、まさかお前がやめるとは、と思っただろう。その時は、友人の前ではあっけらかんとしていた。まぁ大丈夫だよ。という感じのオーラを頑張ってどこからか持ってきていた。親に話した時もそうしていた。まったくそういう気持ちがなかった訳ではなかったが、本音を言えば、絶望的だったはずだ。案の定、辞めてから一ヶ月ほど、家に引きこもり、ずっと寝ていた。空腹で目覚め、ピザを頼んでなんとか生きていた。部屋はピザケースと、職場から持ち帰った書類の山で、足の踏み場もなかった。生きている心地がしなかった。親から金を貰ってもいた。歯を磨く気力もなく、口の中で菌が繁殖して、頬が腫れてきた。それでもその生活をやめられなかった。ただひたすら、下に下に落ちていった。好きなタバコすら吸えなかった。こうやって人は落ちていくのかと思っていた。生きていていい人間ではないと思っていた。どこからも気力は湧いてこないとまで思ったこともあったが、そんなことはなかった。一ヶ月くらいたち少しづつ何かをしなくてはと思うようになった。具体的にはバイトをしなくてはと思っていた。けれども、特定の人と人間関係を持つのが嫌だったから、派遣バイトに登録して色々な仕事をすることにした。結局一年間短期間でバイトし続けた。つい最近まで、綺麗な事務所に通い、二窓のPCの前に座り、メールや図面を書いたりし、現場に行けば設計事務所の人と言うだけで、大人の職人達に敬語を使われる環境にいたが、突然そんなものから遠く離れたところにきた。ただ立っているだけだったり、職人の人に怒鳴られるだけだったり、ゴミを拾うだけだったりした。けれども、全てが楽だった。なんの責任もないし、それが終わればもう会わない人達だらけ、使い捨ての人間関係の連続。そんな一年間だった。